(ブルームバーグ):韓国最大の財閥、サムスン・グループの李健煕氏の長男で、サムスン電子副会長の李在鎔氏は会長の肩書きはないもののグループ内に自らの存在感を示しつつある。
家長の健煕氏が1年前の心臓発作から回復しつつある中、一人息子の在鎔氏は一族の会社の再構築や企業買収を進め、さらに中国の習近平国家主席やアップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)らの要人とも会談している。グループの中核企業であるサムスン電子はスマートフォン「ギャラクシーS6」を発売。韓国で半導体工場建設に150億ドル(約1兆8200億円)を投じる。
在鎔氏(46)は韓国の文化的規範から、父親存命中のため会長に指名されていないものの、約70社を傘下に置くサムスン・グループのかじ取りという責任を担っている。同グループは後継問題についてほとんど説明しておらず、会長入院中は上級幹部が事業を引き続き統括しているものの、在鎔氏は役割を広げ、長期ビジョンを打ち出している。
ハイ投資証券のアナリスト、イ・サンフン氏(ソウル在勤)は「サムスンは父親の時代とは違うというメッセージを在鎔氏が送ろうとしているようだ。在鎔氏は建前上はサムスンの会長ではないが、実際にはそうだと誰もが承知している」と指摘した。
韓国以外の基準でみると、こうしたサムスンのやり方は独特だ。例えば米国では、企業の経営トップが退任もしくは業務を遂行できなくなった時には、直ちに投資家に誰が後継者になるかを明確に示すのが典型的。すぐに公表しない企業には追加情報を求める圧力が高まる。
しかし、サムスンは健煕氏の権限がどのように委譲されるかの詳細について口を閉ざしており、同氏の心臓発作の後、メディアが質問し始めるまでは公式発表を行わなかった。
漢城大学のキム・サンジョ教授(経済学)は、韓国では一族が経営する企業グループで息子が病気療養中の父親から会長職を引き継ぐことは革命と同じと受け止められると指摘。「健煕氏の存命中は、会長職が在鎔氏に譲り渡されることは決してない。これは韓国の財閥の極めてユニークな文化だ」と述べた。
原題:Samsung Heir Who Can’t Take Chairman’s Title Reshapes
Chaebol(抜粋)
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